← Projects 実施中

次世代SPS×MIによる新素材開発プロジェクト

岡山理科大・森嘉久教授との共同研究。卓上規模の次世代超高圧SPSで、先端素材をハイスループットに開発する構想。

次世代SPS(放電プラズマ焼結)装置の写真

概要

次世代SPSによる新素材開発プロジェクトは、スペースシードホールディングスが岡山理科大学・森嘉久教授と進める共同研究です。従来の放電プラズマ焼結(SPS)の圧力限界を大きく超える超高圧領域での焼結を可能にする、卓上規模の次世代SPS装置の開発を通じて、先端素材をハイスループットに開発し社会実装することを目指します。

取り組みの方向性

  • 超高圧SPSプラットフォーム:三軸方向から均等に加圧するアンビル構造と通電焼結を組み合わせた、Palm型キュービックアンビルと SPS を統合する超高圧スパークプラズマ焼結(UHP-SPS)プラットフォームの確立を目指します。
  • 新素材の探索:超硬質材料・透明セラミックス・半導体材料など、機能性材料の開発を視野に入れます。バイオ由来原料からの硬質材料合成や、宇宙・月面での利用が想定される軽量高強度材料は、将来の応用イメージとして検討します。
  • 卓上化による分散型研究:装置の卓上モジュール化により、複数拠点でのハイスループットな材料開発を後押しします。

技術的な裏付け

放電プラズマ焼結(SPS)とは

放電プラズマ焼結(SPS:Spark Plasma Sintering)は、粉末に「加圧」と「パルス直流通電による加熱」を同時に加えて緻密な固体に焼き固める加圧焼結法です。電流による発熱(ジュール加熱)を利用するため数百〜千℃/分級の急速昇温が可能で、短時間で焼結できることから粒成長を抑え、微細な組織やナノ構造を保持しやすいという特徴があります。低温・短時間で緻密化できる点が、難焼結材料や新規相の探索に向く理由です。

従来 SPS の限界と UHP-SPS の発想

一般に流通する SPS 装置の加圧は概ね 0.1 GPa(100 MPa)級にとどまり、難焼結材料や高圧でしか現れない相の探索には物理的な限界がありました。本共同研究は、岡山理科大学・森嘉久教授の発明に基づき、三軸直交方向から均等に圧力を印加できる Palm 型キュービックアンビルと、加圧と同時に直流パルス通電による焼結が可能な構造を組み合わせ、超高圧域での通電焼結(UHP-SPS)を可能にする装置概念を具体化しています。設計思想としては 10 GPa 級――たとえばダイヤモンド合成条件である 5 GPa・1500℃ の領域を視野に入れた指向です。三軸均等加圧により圧力・温度分布の均質性を確保できる点が、従来のピストンシリンダー型に対する利点として挙げられます。

実証された技術的マイルストーン

この装置概念の有効性を示す成果として、当社と森教授らのチームは、従来 1700℃ 超が一般的とされてきたセラミックスの透明化に対し、2.4 GPa・約 600℃ という低温条件下で、アモルファス SiO₂ 粉末から大面積・高均質な透明焼結体の合成に成功しました。パルス通電(ジュール加熱)と高圧の相乗作用により、外部加熱単独では到達が難しい透明化反応を促進したものです。想定される応用領域としては、光学窓・レーザー窓などの透明セラミックス、ナノ多結晶ダイヤモンドや c-BN といった超硬質材料、放射線環境で用いられるダイヤモンド半導体などが挙げられます。これらはあくまで応用イメージであり、各用途での実用化はさらなる検証を要します。

設計(ソフト)と検証(ハード)の往復

無数にある材料の組合せから有望なものを見つけ出す作業は膨大です。当社は、データ駆動で有望候補を絞り込む MI(マテリアルズ・インフォマティクス)の考え方を、焼結による高速な実機検証と組み合わせるアプローチを進めています。2026 年 6 月には、AI が提示する材料候補を「自社の製造装置で実際に作れるものだけ」に最上流で絞り込む合金MI探索システムを自社構築し、宇宙用途を含む複数の材料系で動作を確認したことを公表しました。AI で賢く設計し、焼結で素早く検証する――この往復を速く回せる基盤づくりが、ハイスループットな新素材開発を支えます。

最近の取り組み

研究成果は国際学会 29th International Conference on High Pressure Science and Technology(AIRAPT-29)でポスター発表されました。2.4 GPa・約 600℃ という低温条件下でアモルファス SiO₂ 粉末から大面積・高均質な透明焼結体の合成に成功し、UHP-SPS プラットフォームの有効性を実証しています。